超音波フリップチップ実装は、チップ側の金バンプと基板側の電極を、荷重と超音波振動で押し付けながら接合するフリップチップ実装の方式です。はんだを溶かさずに金属同士を直接つなぐため、フラックスや洗浄の工程が不要で、1秒以下という短時間で接合できます。
SAWフィルタや水晶発振器、高輝度LEDなど、小型で汚れや熱に弱い部品の実装で広く使われてきました。ここでは、超音波フリップチップ実装の仕組み、ほかの接合方式との違い、工程、メリットと課題、主な用途、委託先に確認したいポイントを紹介しています。
代表的なのが、金バンプと金電極をつなぐAu-Au接合で、GGI(Gold to Gold Interconnection)とも呼ばれます。基板を加熱した状態でチップを押し当て、ボンディングヘッドから超音波振動を加えると、バンプと電極の接触面がこすれ合います。表面の薄い汚れや酸化膜が取り除かれて金属の新しい面が現れ、金原子同士が拡散して一体化します。
このとき金は溶けません。固体のまま原子レベルで結びつく「固相接合」なので、はんだ接合のようにフラックスで酸化膜を除去する必要がなく、ボイドの少ない均質な接合層ができます。原理はワイヤーボンディングで金線を電極に接合する方法と同じで、それをチップ全体のバンプに一括で適用したものと考えるとイメージしやすいでしょう。
加熱温度は一般に150℃以下、荷重はバンプ1個あたり100g未満とされ、熱や力の負担が小さい点も特徴です。
参照元:米国特許 US7642135(https://patents.google.com/patent/US7642135)、Fraunhofer(https://publica.fraunhofer.de/handle/publica/348084)
フリップチップの接合方式には、超音波接合のほかに、はんだを溶かすマスリフロー(C4)、加熱と加圧で接合する熱圧着ボンディング(TCB)、導電粒子を含むフィルムで接続するACFなどがあります。超音波接合の違いは「金属を溶かさず、フラックスも接着剤も使わずに、金属同士を直接つなぐ」点にあります。
| 比較項目 | 超音波接合(Au-Au) | マスリフロー(C4) | 熱圧着(TCB) | ACF |
|---|---|---|---|---|
| 接合のしくみ | 超音波+荷重による固相接合 | はんだを溶融させて接合 | 加熱・加圧で接合 | 導電粒子を介した接触 |
| 主なバンプ | 金スタッドバンプ、金めっきバンプ | はんだバンプ | 銅ピラー、マイクロバンプ | 金バンプなど |
| フラックス・洗浄 | 不要 | 必要 | 方式による | 不要 |
| 1チップの接合時間 | 1秒以下 | リフロー炉で一括加熱 | 1チップずつ加熱サイクルを回す | 仮圧着+本圧着 |
| 得意な領域 | 小型・少ピン、汚れや熱に弱い部品 | 量産品の一括処理 | 狭ピッチ・多ピン | ディスプレイ、フレキ基板 |
ACFとの比較では、超音波接合は金属接合のため導電粒子による接触より信頼性が高く、接合サイクルを数分から10秒未満に短縮できたという研究報告もあります。マスリフローとTCBの違いはTCBとマスリフローの比較、工程全体の流れはフリップチップ実装工程で紹介しています。
参照元:J-STAGE(https://www.jstage.jst.go.jp/article/mes/26/0/26_99/_pdf/-char/ja)、Harbin Institute of Technology(https://scholar.hit.edu.cn/en/publications/gold-to-gold-thermosonic-flip-chip-bonding/)
主な条件は、荷重、超音波出力、接合時間、加熱温度の4つです。金スタッドバンプを銅電極に接合した研究では、荷重と超音波出力を上げるほど接合強度が高まると報告されています。
もう一つ重要なのが、チップと基板の平行度です。傾いたまま押し当てると一部のバンプだけに力がかかり、接合不足が起きます。超音波接合の実装精度は±10μm程度で、厚さ100μmの薄いチップまで接合できるとされています。
バンプの作り方は半導体におけるバンプとはで紹介しています。
参照元:J-STAGE(https://www.jstage.jst.go.jp/article/mes/26/0/26_99/_pdf/-char/ja)、TDK(https://www.tdk.com/ja/tech-mag/hatena/050)、Springer(https://link.springer.com/article/10.1007/s11664-008-0510-8)、Harbin Institute of Technology(https://scholar.hit.edu.cn/en/publications/gold-to-gold-thermosonic-flip-chip-bonding/)、米国特許 US7642135(https://patents.google.com/patent/US7642135)
不良の見つけ方や対策はフリップチップ実装不良、費用の考え方はフリップチップ実装のコストもあわせてご覧ください。
参照元:米国特許 US7642135(https://patents.google.com/patent/US7642135)、TDK(https://www.tdk.com/ja/tech-mag/hatena/050)、Fraunhofer(https://publica.fraunhofer.de/handle/publica/348084)、Springer(https://link.springer.com/article/10.1007/s11664-008-0510-8)、J-STAGE(https://www.jstage.jst.go.jp/article/ejisso/29/0/29_240/_pdf/-char/ja)
スマートフォンの通信回路に使われるSAW(弾性表面波)フィルタや、温度補償型水晶発振器(TCXO)は、超音波フリップチップ実装の代表的な用途です。振動を利用して信号を処理する部品のため、接着剤やフラックスの残渣が特性に影響しやすく、何も挟まずに金属同士をつなげる超音波接合が適しています。ワイヤーボンディングよりパッケージを小さくでき、電気特性にも優れます。
高輝度LEDのパッケージ組立てにも広く使われています。金バンプは熱をよく通すため、発熱するLEDチップの熱を基板へ逃がしやすいのが利点です。光学部品や光デバイスの実装事例はマイクロLED・光学部品におけるフリップチップボンディングで紹介しています。
フラックス残渣による汚染に敏感なBAWフィルタやMEMSデバイス、高温環境で使う温度センサーなどにも適用されています。MEMSでの活用はMEMS・センサーにおけるフリップチップボンディングの活用をご覧ください。
参照元:J-STAGE(https://www.jstage.jst.go.jp/article/mes/26/0/26_99/_pdf/-char/ja)、TDK(https://www.tdk.com/ja/tech-mag/hatena/050)、米国特許 US7642135(https://patents.google.com/patent/US7642135)、Fraunhofer(https://publica.fraunhofer.de/handle/publica/348084)
超音波接合は、装置の性能と前処理のノウハウで仕上がりが大きく変わります。委託先を選ぶ際は、次の点を確認しておくと安心です。
見積もりを依頼する際は、チップサイズと厚さ、パッド数とピッチ、パッドの材質、基板の種類と電極の仕上げ、アンダーフィルの要否、試作数量と想定量産数を伝えると、話がスムーズに進みます。
当サイトのフリップチップ実装の受託企業一覧でも、Au-Au超音波接合に対応する企業を紹介しています。
超音波フリップチップ実装は、金バンプと電極を荷重と超音波振動で固相接合する方式です。フラックスも洗浄も要らず、1秒以下で接合でき、熱や力の負担も小さいため、SAWフィルタや水晶発振器、高輝度LED、MEMSなど、小型で汚れや熱に弱い部品の実装に適しています。
一方で、金のコストや電極表面の管理、荷重と平行度の調整など、安定して接合するにはノウハウが欠かせません。超音波フリップチップ実装を検討する際は、バンプ形成から清浄化、接合、評価まで一貫して相談できる受託企業を選ぶことが近道です。
フリップチップボンディングを含めた半導体製造後工程を委託することができる企業の中で、高度な技術による「小型化・高速化」、複数製造会社での分散対応による「短納期」、部品調達による「低コスト」と、それぞれの特長を持つおすすめの企業を紹介します。ぜひ委託先を選定する際の参考にしてください。

端子ピッチ30μmの実装や6Gなど次世代通信の200GHzクラスの実装が可能な技術力を持つ企業。他社では対応が難しい微細接合にも対応できます。
小型化・高速化に向けた高精度な実装が求められるイメージセンサのパッケージングやカメラモジュール、次世代通信などへの対応に適しています。

高い技術を持つ製造会社を委託先に持つ、自社工場を持たないファブレス企業。1案件を複数の企業で分散対応できるため短納期が実現可能です。
スマートデバイスやPC関連機器、IoTデバイスなど製品のライフサイクルが短く、迅速な製品投入が必要な場合に適しています。

部品調達において国内外に50を超える多様なネットワークを構築(※)しており、低価格での仕入れが可能。低コストでの量産を実現できます。
家庭用電子製品やオーディオ機器製品など、売れ行きが予測できる製品のシェア拡大を狙った量産が求められる場合などに適しています。
※2024年10月確認時点:参照元:ピーダブルビー公式HP(https://pwb.co.jp/service/assembly/)